年俸を調整して均衡化をはかるサラリーキャップ制

プロスボーツ会で導入されているサラリーキャップ制って何?

サラリーキャップ制とは、プロスポーツにおける選手の年俸を規制するための制度の一種です。
正確に言えば、選手の年俸ではなくそのチームの年俸総額を規制するための制度、と言えるでしょう。
あるプロスポーツのリーグ全体の収支を元に、各チームの所属年俸の総額の上限を設定し、その範囲内で年俸を決める、あるいは全体の年俸総額を決める形を取っています。

なぜこのような制度が導入されるのでしょうか?
そこには、プロスポーツ経営の健全化やチームごとの格差の調整、さらに年俸の高騰を抑える狙いが見られます。
強いチームを作るために高年俸の選手を多数獲得した結果、チームが赤字経営になってしまい、親会社の支援頼みの状況になってしまうのを防ぐのに役立ちます。

逆にお金がもっているチームが高年俸の選手を抱え込んで、資金力が乏しいチームは良い選手を獲得できないといった状況も避けられます。
さらには、資金力に乏しいチームで活躍している選手がより高い年俸を提示した資金力があるチームに流出してしまう、という事態を防ぐのにも、このサラリーキャップ制が役立つのです。

例えば、サラリーキャップ制度によってあるリーグの総年俸の上限が100億円になったとします。
その状況で年俸30億円の選手を獲得した場合、残りの70億円で他の選手の年俸をカバーする必要が出てきます。
そのため、例えばすでに年俸30億円の選手が2人いるチームが年俸25億円の選手を新たに獲得したい場合、30億円の選手のいずれかを放出して調整する、といった方法が行われることもできます。
年俸が高い選手をあるチームが独り占めしたり、「飼い殺し」するのが難しくなるわけです。

90年代ころからアメリカではプロスポーツ選手の年俸の高騰が大きな問題となり、資金力のあるチームが高年俸の選手を獲得して圧倒的に有利になる、といった状況が起こりました。
こうした問題を防ぐ対策の一環として生まれたのが、このサラリーキャップ制度なのです。
アメリカのNFLではこのサラリーキャップ制度を導入したことで、勢力の均衡が実現し連覇が難しくなったとも言われています。

サラリーキャップ制を導入しているスポーツにはどんなものがある?

もともとアメリカでのスポーツ選手の年俸の高騰と戦力の不均衡が原因となって生まれた制度ということもあって、アメリカのプロスポーツでは積極的に導入されています。
上記のアメフト、そしてアイスホッケー(NHL)、バスケットボール(NBA)などです。

野球(MBL)ではこのサラリーキャップ制度の導入に対して選手会が猛反発し、1994年に選手会がストライキが行われリーグ戦・ワールドシリーズともに中止になりました。
MBLでは、サラリーキャップ制のかわりに年俸総額が基準を超えた場合に課徴金が発生する「贅沢税」が導入されています。